マンシオンに住まふ

マンション生活やその他諸々

マンション修繕工事コンサルタントに求められる能力

団地再生―甦る欧米の集合住宅

団地再生―甦る欧米の集合住宅


本書は、欧米のマンションの再生事業を紹介したものだが、この集合住宅の再生事業の専門家に求められる能力というのが、まさに日本の管理会社(管理者、コンサルタント)に求められる能力と合致している。
ハードスキルとソフトスキルに分けて整理してみると、

ハードスキル(建築の専門知識)

既存のマンションの居住環境としての質を診断し、改善すべき事柄を的確に見極める能力。また、住宅の信頼を得るためには、診断業務は工事業者から独立した第三者性を持っていることが必要。

ソフトスキル

  1. コミュニケーション能力   工事内容等の住宅間の合意形成、スケジュール等の周知徹底など住宅との良好な関係を築くための能力
  2. 語学力    効果的なプレゼンテーション能力や心証を害さない会話法といった事柄の他に、合意形成のための会議の進め方に関するノウハウ、場合によっては複数の言語を操れる能力
  3. マネージメント能力   住宅にとって生活上不便な期間を出来るだけ短くする、資材搬入をきめ細かくおこなう等のスケジュール管理能力
  4. ファシリテーション能力   改修工事が新築工事と大きく異なる点は、それぞれの専門職に割り当てられる仕事が細切れになりやすいこと、そして狭い場所で複数の専門職の仕事か錯綜しやすいことであり、それらをまとめて最適化する能力

日本の管理会社と比較して

 現状において、日本でマンションの大規模修繕等を行う場合、上記のような役割を任されるのは管理会社が多いと思われる。それぞれで比較してみると、
  1. まずハードスキルの面においては、診断業務については建築士等を活用すれば良いのだが、第三者性、つまり工事業務との独立性が完全に欠けている。大手管理会社のほとんどは自社内に工事部を持っており、当然そちらで工事業務を受注しようとする傾向が強く、これが住民の不信感を招く要因ともなっている。
  2. ソフトスキルについては、個々のフロントマンの資質によるところが大きいと思われるものの、住民の合意形成等にかける時間や事務量が欧米と比較して圧倒的に少ない。こうした成果は目に見えにくいものであり、また管理会社にとってもそれに見合った対価が得られにくいという面もあると思われる。ただし、日本でもこうした住民間のコミュニケーションの醸成といった部分は重要視されつつあり、今後は、こうした住民とのコミュニケーションに特化しま専門家が生まれる可能性もある。

まとめ

 こうした診断業務やコンサルタントを管理会社に頼む場合、一番問題となるのは、工事業務との独立性である。そもそも、日本の場合は管理会社が工事に限らず、清掃や警備などの現業部分を持っていることが、マンション管理においてかなり問題となっているわけだが、またそれは別の話。