マンシオンに住まふ

マンション生活やその他諸々

マンション(RC構造)は何年もつか

マンションは、いったい何年もつかというのは重要や問題ではあるのだが、諸説あるところで、まだよくわからないところも多い。
早稲田大学の小松先生の論文がまとまったもの。


小松先生の資料は、国や地方の審議会等でもよく引用されているようです。
この資料から、マンション部分についてまとめてみた。

ハード面(構造的要因)

  • RC住宅の減価償却としての耐用年数は60年となっており、その根拠としてはコンクリートの中性化速度を大きな要因としている。
  • 中性化とは、セメントが本来備えているアルカリ性が空気中の二酸化炭素等の影響により中性となる現象で、それにより鉄筋の発錆の危険性が大きくなるといわれる。
  • ただし実際には、コンクリートの劣化に影響する要因は中性化だけでなく、むしろ施工中に生じる様々な欠陥やそれに関連した亀裂(例えば、生セメントを急速に固めたりすると、亀裂が生じやすくなるといわれる)等が原因であることが多い。
  • コンクリートが問題視されるようになったのも、こうした点に配慮が足りない物件が多かったためである。
  • 鉄骨についても、たしかに錆が寿命に影響はするが、問題になるのは初期のプレハブ住宅のような比較的肉厚の薄い場合であり、技術が向上している現状ではほとんど問題ない状況にある。

ソフト面(主に経済的要因)

  1. 建物が、住民の生活水準の向上や生活様式の変化等によりすぐに陳腐化してしまう。
  2. 土地本位制経済(土地が主に評価され、古い建物はほとんど評価されない)

まとめ

建物寿命は、これまで構造材料や構造方式によるハード面の要因が大きいものと考えられてきたが、しっかり施工された近年のマンションにおいては、むしろそれ以外のソフト面の上記2つの要因に大きく影響されるようである。
マンションの場合でいうと、まず1.で、専有部分の部屋の構造が陳腐化して間取りを変えたいと思っても、RCにおいては間仕切りを撤去したらその分の補強を施す必要があり、非常に面倒かつコストのかかる作業となる。ロビーなど共有部分の更新も同様の理由があり、また合意形成も手間がかかるだろう。
また、2.の古い建物があてにされない理由として、その建物の安全性や改修履歴がわからないからとする見解がある。日本の場合、個々の建物についての情報は登記簿に記載されている程度のものに限られ、構造設計書や改修履歴は残っている方が珍しいといえる。いわゆるインスペクションも普及していない。

※因みに、マンションの標準管理規約においては、構造設計書は管理組合の責任において保管することになっている。マンションの改修等を行う際に非常に重要なものであり、電子化して永年保存出来るようにすることが望ましい。また、マンションのメンテナンス・改修履歴についても、管理組合が保存すべきことが明文化された。

もちろん、修繕履歴記録保管の前提として、定期的にきちんとしたメンテナンスをすることが重要であり、そのために管理組合が主体となり、しっかりした長期修繕計画を立て、計画的な修繕積立金を徴収することが必要である。

まだ日本においてはコンクリート住宅の歴史は浅く、実際のところどれだけもつのかはよくわかっていない。しかし、今後はこれまでのように安易に立て替えを選択する傾向は薄れていくものと思われ、またマンションの設計、施工や修繕履歴等の情報がはっきりしていれば建物の資産価値ももっと評価されるようになると思われる。
施工がしっかりされた近年のマンションにおいては、メンテナンスや情報の記録をしっかり行っていけば、欧米のマンションと同じくらいもつのではないだろうか。そのためには、マンション管理組合の運営が非常に重要になってくるのだか、それはまた別の話。